平成十九年度 菊舎顕彰俳句大会入賞作品
10月21日 於) 田耕農林漁家婦人活動促進センター
兼題「菊」及び雑詠
県知事杯賞
入賞の菊より低き父の背丈 山陽小野田市 川端健一
リヤカーで菊の弁慶着きにけり 山口市 米田俊則
歩かねば影の溶けだす炎天下 下松市 江本百合松
五客 シャボン玉こころに沖のある日なり 宇部市 中塚紀代子
五客 鬼灯を潰し少女の反抗期 山口市 笹川章
五客 虫の闇少年やさしくなっており 柳井市 片山放魚
五客 野地菊の下の下より日本海 山口市 伊藤愛子
五客 児らの列こつくり曲る野菊晴 防府市 伊藤仙女
佳作 野菊咲く島に一基の遊女墓 下関市 河野道春
佳作 一面の蕎麦の花へと帰郷せり 東京都 山戸則江
佳作 卒寿すぎ尚生かされて菊の花 下関市 伊藤松枝
佳作 菊を焚くいのちの涯のいろを焚く 山口市 河野悦子
佳作 大窓にひびく産声菊日和 下松市 藤井八重子
一字庵賞
大人の部 背負ひし荷するりとおろす菊日和 豊北町 中山芳江
学生の部 銀の腹天にはばたくやまめ釣り 豊浦小六年 丸尾圭史
教育長賞
小学生の部 タオルまき校長先生草をかる 神田小四年 中村大地
中学生の部 本能寺扇子片手に道迷う 豊北中三年 吉田奏哉
高校生の部 龍胆の青さにまどう羽虫かな 豊北高一年 長井優紀子
NHK賞
大人の部 法座出てはや炎天に躓けり 豊北町 西島民江
学生の部 もみじのはばいばいしながらおりてくる 名池小一年 もりたこうき
学生の部 いがぐりのぽとんと落ちる草の中 田耕小六年 豊田まりあ
山口朝日放送賞
大人の部 居待月父の机の広さかな 柳井市 片山淳子
学生の部 ほしかった出目金すくったなつまつり 文関小二年 田中茉怜
学生の部 なしえんの上にながれたながれぼし 豊田中小五年 山野敏毅
選者特選賞
中村石秋選 卒寿すぎ尚生かされて菊の花 下関市 伊藤松枝
中村石秋選 しゃぼん玉こころに沖のある日なり 宇部市 中塚紀代子
河村正浩選 菊を焚くいのちの涯のいろを焚く 山口市 河野悦子
河村正浩選 法座出てはや炎天に躓けり 豊北町 西島民江
福田帆江選 大窓にひびく産声菊日和 下松市 藤井八重子
福田帆江選 望郷の一言重し雲の峰 長門市 宮野しゆん
岡 昌子選 背負ひし荷するりとおろす菊日和 豊北町 中山芳江
岡 昌子選 居待月父の机の広さかな 柳井市 片山淳子
下関市長賞  (当日席題 「穭ひつぢ」)
余生とて燃ゆる日もあり穭の穂 下関市 岩田十代子
穭田に離農の決意定まらず 豊北町 小林堪信
穭田に農継ぐ覚悟まだ決めず 萩市 中村静山
五客 縄文の命受け継ぐ穭の穂 山口市 正木千鶴子
五客 穭田や農婦の干せる白シーツ 下関市 角田節子
五客 穭田のただ広がりぬ路線バス 豊北町 恒冨靖子
五客 穭穂の余生のごとく吹かれをり 山口市 米田俊則
五客 晩学の集ひは楽し穭の穂 豊北町 藤田志津
佳作 村中が穭となりて風招く 下松市 河村正浩
佳作 不出来なる田ほど濃くなる穭かな 豊北町 古川哲郎
佳作 穭田を褥となして鷺二つ 豊浦町 上原妙子
佳作 穭田にかそけき叫び一揆の碑 豊浦町 江尻伍風
佳作 穭田に歩きそめたる嬰を立たす 豊北町 中山芳江
佳作 足もとにしんと日の射す穭かな 豊北町 静間まさ恵
佳作 穭田の午後の日差しに犬放つ 豊北町 船本桃子
「学生の部」への一字庵(岡昌子)講評
 今回「学生の部」に投句いただいた学校は初参加も増え21校 695名 (内訳 小学生288名、中学生243名、高校生164名)、投句数 1067句のご参加をいただきました。
 入賞作品をご覧いただくとおわかりのように、実際の体験を、素直に詠んだ俳句に感動を覚えました。その他の作品につきましては、無季語・季語の重複・説明、景の報告が多く、もっとさまざまな題材に挑んで欲しいと思いました。

 教育長賞の小学生中村君の句、校庭の草を刈ってくださる校長先生を、しっかりと見ていました。上五の「タオルまき」に炎天のなか奮闘されている校長先生の姿と、作者の感謝の心がしのばれる句です。中学生吉田君の「本能寺」の句は、京都研修旅行中の作品として大変すばらしいと思います。信長暗殺の歴史舞台の本能寺を捜す作者の手に「扇子」とは、季語の斡旋が見事です。道に迷ったのは吉田君ですが、信長も光秀も道を迷った人物といえましょう。本人に作為はなく、これこそ俳句は賜りものといえる好例でしょう。高校生長井さんの「龍胆」の句、対象をしっかり見つめていますし、詩心がすてきです。
 NHK賞のもりた君の「もみじのは」の句、「おててのような」といわないで「ばいばい」と散る様子をよんだのがよかったですね。「いがぐりの」豊田さんの句は、よく観察してとても素直です。
 山口朝日放送賞、田中さんの「なつまつり」の句、気持ちのよくわかる俳句です。「ながれぼし」の山野君の家は、豊田特産の梨農家でしょうか。梨園という身近なものを具体的にだしたことにより、縦横の構図まで想像される一句です。
 一字庵賞の丸尾君、爽快な「やまめ釣り」、大人も脱帽するほどの俳句です。
 入賞作品の俳句は、季語が動かない、ものが効いている、人まねでなく、作者の素直な思いが伝わってくるものばかりです。俳句は頭で作らず、感動が何より大切です。ひとりひとりの個性を尊重して、大人の観念で誘導しないことです。そして、正直で手ざわりのある句を、誉めてやってください。
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