平成22年度 菊舎顕彰俳句大会入賞作品
10月17日 於)下関市 田耕農林漁家婦人活動促進センター
兼題「菊」及び雑詠
県知事杯賞
海峡の街知りつくし燕去ぬ 下関市 福嶋 泉
忌を修し母の残せし菊根分け 下関市 池田尚文
草の実を摘んで人待ち顔になる 東京都 山戸則江
五客 雨の日は雨のうた詠み菊膾 山口市 吉次 薫
五客 エプロンのまま日の暮るるいわし雲 山口市 名畑愛子
五客 八月の父の孤独を思ひけり 豊北町 恒冨靖子
五客 百寿母と手をつなぎたる菊日和 防府市 椎木富子
五客 木から木へ幣めぐらして滝涼し 下関市 今本波津代
佳作 利根川の堤に沿うて菊の畝 群馬県 栗原 満
佳作 菊師来て無言ではがす姫の衣 萩市 岩本徳重
佳作 百歳の母と只居る菊の縁 豊田町 木本光世
佳作 かまきりに玄関ドアのノブとらる 下関市 角田節子
佳作 菊月の青を広げて庭師去る 下関市 木嶋政治
一字庵賞
大人の部 晩菊やこれより荒るる響灘 豊北町 山本洗脂
学生の部 あめんぼう水にうかんで水をける 田耕小三年 豊岡 樹
教育長賞
小学生の部 ぷぷっぷぷすいかのたねのとばしっこ 室津小一年 船津みき
中学生の部 頬伝い落ちゆく汗に大志あり 豊北中二年 榊田彰史
高校生の部 手花火が消えた後の夜の色 豊北高 二年 光田佑里恵
NHK賞
学生の部 あみのなかカニがぐちぐちないている 川棚小一年   克嘉
学生の部 わり算のとく意なボクのスイカわり 名池小四年 守田光希
大人の部 農やめてとなりの植田風もらう 豊北町 小林堪信
山口朝日放送賞
学生の部 さかあがり手にまめつくった夏休み 室津小五年 浜岡諒伍
学生の部 ざくざくと選んで歩くしもばしら 下関神田小 六年 吉本ゆりあ
大人の部 顔見ては孫に泣かるる菊日和 豊北町 磯部多恵子
下関市長賞  (当日席題 「行く秋」)
行く秋へ画鋲の残る伝言板 下関市 今本波津代
行く秋や目に山の色海の色 豊浦町 谷村まつえ
行く秋の一帆沖へ押し出せり 下関市 坂本悦子
五客 どこまでも錆ぶ単線や秋行けり 山口市 吉次 薫     
五客 夕映えの橋駆け抜けて残る秋 豊北町 古川むつ子
五客 行く秋や寄り添う母の細き腕 豊北町 下田勝代
五客 石碑は秋恋ふる歌秋の行く 下関市 森田泰子
五客 行く秋の棄て船滌ふ荒磯かな 豊浦町 益田耕雨
今年も好天でした 選者講評 中尾市長の挨拶 岡会長挨拶
 
「学生の部」への一字庵(岡昌子)講評

 教育長賞の小学生船津さんの句、上五の擬音がリズミカルで実際にスイカの種を飛ばしている気分になりました。かわいい俳句です。中学生榊田君の句は、少年らしい希望にあふれる健康的な俳句です。部活動でしょうか、流れ落ちる汗をものともせず励む作者に声援をおくりたくなります。高校生の光田さんの「手花火」の句、消えたうしろの闇を詠んだところが素敵です。とかく、夜空に咲いた花とか表現している人が多いのですが、視点を変えて詠むと、より一層手花火のはかなさが表現されます。
 NHK賞のくん、捕まったカニをよく見ています。ぐちぐちの擬音も的確でカニに共感している姿が目に浮かんでくる一句です。守田くんの句は、愉快な発想です。スイカを割った後は、確かに割り算だと納得しました。キャッチフレーズのようなパターン化されたものでなく、独創的な句はとても新鮮です。
 山口朝日放送賞、浜岡くんの句、手に豆という具体的なもので、さかあがりに挑戦した夏休みが想像できます。吉本さんの「しもぱしら」の句、中七の「選んで歩く」に共感します。音と感触を楽しんでいる光景が見えます。
 一宇庵賞の豊岡君の句は、俳句の手本のようです。あめんぼうが水にうかんで水をけるのは当たり前のようですが、それをそのまま五・七・五にし、あめんぼうのみに焦点をあてて作為のない一句です。
 このように入賞作品の俳句は、対象物と心を通わせている作者の姿勢が見えてくるものばかりです。俳句は頭で作らず、感動を大切に、子供自身の詩ごころを第一としてください。
いのちに共鳴する俳句、個性ある俳句を期待しています。
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