新・菊舎慕情
「新 菊舎慕情」連載にあたり

田上菊舎の生誕地、山口県豊浦郡豊北町(現下関市豊北町)の「広報 ほうほく」に『菊舎慕情』の連載が始まったのは、平成11年4月からでした。それから5年間、60回をもって一応の完結をみました。
その後、読者の方から一冊の本としての出版をすすめられましたが、次々と資料が発見され、調査の結果、これまでの菊舎行程年次など加筆修正する必要が出てきました。
このたび、菊舎顕彰会がホームページを立ち上げましたので、さきの『菊舎慕情』に手を加え『新 菊舎慕情』として、毎月、連載していくことにしました。年次を追って、菊舎の俳句を載せ、その生涯や背景をわかり易く紹介していく予定です。どうぞ、ご愛読ください。

                    著者 
一字庵十一世 岡昌子
                著作権 菊舎顕彰会(無断転載を禁ず) 

新菊舎慕情 100
     こはいかに秋に斯した雁の伝     望洋園


 
生誕地の門弟、望洋園一廬(中野謙蔵)の弔辞を紹介し、最終といたします。

  ― 追悼 ―
 月を笠に着て遊ばゝやと 杖とりあへず頭陀打かけて
 ひとり千里の旅へ思ひ立給ひしは 田上のうじ菊舎師の若かりし時なりとぞ
 さは天が下になる隈々は 更にも云はず うつたかき雲のうへには
 琴瑟のしらべをすまし 薄折しく侘寝には 月を友とも 秋の夜長を明し
 花や今宵のあるじといゝし 木陰に一刻千金の春宵をおしみ
 凡三十余とせを風雅の岐にただよひ給ひしが 親戚社友の人々に引留られ
 こころ遊べ天涯比隣の一句に悟り 郷の一字庵におちつき給ひて
 近里遠境の雅友 日々にいざなひ 月々に慕ひ 虚実自在の風味を諭さるゝ中にも
 予は不思議の因縁ありて 足のごとく 手の如く 子の如く 親のごとく契り
 相かたらふなど近き文の端にも見へさせ侍りて 他に異なる慈恩を蒙りしが
 はからずも ことし葉月の二十又三日の夜 物古し給ひしとなん
 呼鳴 一日介抱の手を添へず 一字病床を伺ふにもあらぬ
 疎懶が罪をこゝろに侘つゝ涙を払ふて黙然と そなたの空にうち打向ふならし

   こはいかに秋に斯した雁の伝       望洋園



菊舎慕情バックナンバー
No. 「荻萩の・・・ No.51 泉ほど・・・
No.2 「月を笠に・・・ No.52 ひとりそっと・・・
No.3  「吾笠に・・・  
「染て行む・・・
No.53 牡丹見て・・・
No.4 秋風に・・・ No.54 うきわれを・・・
No.5  和らかに・・・
教えの春を・・・
No.55 海にむかふ・・・
No.6  「通さねば・・・
「関の戸を・・・
No.56 照らしてよ・・・
No.7 花見せる・・・
破れし・・・
No.57 つもるほど・・・
No.8 長門なる・・・ No.58 をしてるや・・・
No.9 世の俳人は・・・ No.59 月に花に・・・
No.10 姨捨てた・・・ No.60 天目に・・・
No.11 月も涼し・・・ No.61 ひかで遊ぶ・・・
No.12 「姨石を・・・ No.62 けふは茶の・・・
No.13 「しばらくは・・・ No.63 あそびきては・・・
No.14 笠ぬげば・・・ No.64 高麗も・・・
No.15  「見て居れば・・・ No.65 往て来ふか・・・
翅打て・・・
No.16  「関の渡辺氏一陽斎に・・・ No.66 いとゆふや・・・
No.17  「稲干て・・・ No.67 けつく空の・・・
No.18  「読みなをす・・・ No.68 老に恥ず・・・
No.19  「月や澄ん・・・
 「待受けて・・・
No.69 せきくだす・・・
No.20 「世の花を・・・ No.70 われたりな・・・
No.21 踏しめて・・・ No.71 山鳥の・・・
No.22 山中や・・・
No.72
姿すゞし・・・
No.23 松島や・・・
指出る・・・
 
No.73 酌み初る・・・
No.24 雪に今朝・・・
鐘氷る・・・
 
No.74 かかる時や・・・
No.25 そふかそれよ・・・ No.75 染る秋や・・・
No.26 「爰に道の・・・
「香はうすくとも・・・
No.76 薫る風や・・・
No.27 「花に遊ぶ・・・ No.77 こちからも・・・
No.28 船は着ど・・・ No.78 長門がた・・・
No.29 頭陀の限り・・・ No.79 花の骨も・・・
No.30 十徳の・・・ No.80 浮舟や・・・
No.31 荷ひ行かん・・・ No.81 こゝろ遊べ・・・
No.32 「涼しさの・・・ No.82 蓬莱の・・・
No.33 うけとらん・・・ No.83 夏きくや・・・
No.34 帰る晴も・・・ No.84 切れてきれぬ・・・
No.35 今さらに・・・ No.85 雲となる・・・
No.36 あんじさせた・・・ No.86
錦着るや・・・
No.37 生れかへた・・・
両の手に・・・
No.87 待受の・・・
手廻し早く・・・
No.38 暦にも・・・ No.88 かへり見るや・・・
No.39 何もかゝで・・・ No.89 敷しのぶ・・・
No.40 重ね汲むや・・・ No.90 故郷や・・・
No.41 うしろ楯も・・・ No.91 (みが)く玉や・・・
No.42 千金の・・・ No.92 勢ひも・・・
仰ぐ千とせ・・・
No.43 またも世に・・・
教へられて・・・
No.93 天が瀬の・・・
No.44 遊ぶ気の・・・ No.94 長門がた・・・
No.45 たをれふす・・・ No.95 そゝぐ筆や・・・
No.46 (こも)着ても・・・ No.96 雨きのふ・・・
No.47 山門を・・・ No.97 しらべ清し・・・
No.48 (うぐいす)・・・ No.98 故郷(ふるさと)恋し・・
No.49 夏山に・・・ No.99 無量(むりょう)寿(じゅ)・・
No.50 いたゞいて・・・

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