立机を目前に控えた十月のある日、十一世の元にとんでもないものが持ち込まれました。
山口の古書店の方が持ち込んだそれは、表に二見浦と扇に書かれた梅の図と菊舎の落款、裏に各務支考の二見の句が書かれ、紛失した田耕一字庵の文台の特徴そのままの木の板でした。
付属の箱の蓋と思われる板に書かれた内容から、表は菊舎の画、裏は萩の竹奥舎其音の書で、どうやら田耕一字庵の文台の可能性は低く、
萩の俳人に与えられた文台であるようです。
しかしこのタイミングで持ち込まれたのは運命としか思えず、頼み込んで顕彰会の方にお譲りいただくこととなりました。
文台は脚が失われており、また、箱があったと思われますが蓋のみが残っています。今後、足の復元や箱の新調を進めていきたいと思います。
十二世の継承のタイミングで顕彰会にもたらされたこの文台、次代へと末永く伝えてゆきたいと思います。
一字庵十二世 古川耕誦

表:梅と二見岩

裏:支考の二見の句

蓋:菊舎風尼画とある