よそ見 わき見 気まま旅

第49回  中山道(追分宿)
街道沿いの古民家

 各地に追分の名は見えますが、それらを差し置いて先ず思い浮かべるのは、北国街道と中山道の分岐点、追分宿でしょう。
 二つの街道の分岐点は分去れ(わかされ)と呼ばれ、大きな石灯籠が立っています。後方には馬頭観音が控えています。
 馬が重要な交通や運搬の手段であったこの時代、馬を大切に思う気持ちが、ごく自然に全国各地に馬頭観音像をたてさせたようです。
 現代の追分宿には僅かな江戸時代の建物が残るだけで、かつての宿場町というよりも堀辰雄の文学館の方に気を曳かれてしまいそうです。
 気ままな旅人にも若い頃があり「風立ちぬ、いざ生きめやも」の言葉が遙かに遠い記憶の中から立ち上がって、少しばかりくすぐったい思いで文学館の前を通り過ぎました。
 僅かに残る古民家の、二階の不揃いな格子越しのガラスに映った青空に惹かれて近づいてみると、ままごとや、と書かれたお店でした。ところが、入り口には南京錠がぶらさがって、只今冬眠中の張り紙も。
 とっくに啓蟄も終わった4月なのに、何と長い冬眠なのでしょう。
 (中村 佑)    2018年1月1日



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