よそ見 わき見 気まま旅

第42回  中山道(妻籠)
 ―妻籠宿高札場前の水車―

 歴史的建造物群保存地域にいち早く認定された、歴史の香り豊かな町並みが多くの人を惹きつける、木曽路を代表する宿場町の一つです。
 驚くのは、通りを歩く人達の多くが外国からの旅行者であることです。気ままな旅人がお世話になった宿の夕食時間、ずらりと並んだ外国からの旅人に混じって日本人は私一人だけでした。別の場所を準備しましょうか、と宿の方に気を遣わせてしまったほどです。
 時代劇の撮影場所にも似合う通りを、赤やピンクのヤッケに大きなリュックを背負った碧眼の紳士淑女が、風の匂いすら聞き漏らさない真剣さで、舐めるように通りを眺めて歩く姿は、非常に微笑ましく感じられます。
 朝の早い通りには、木曽川から次々に霧が流れ込み、まだ明かりが点ったままの店先の行燈がその霧に滲んで、通りを行く人の姿がソフトフォーカスの影になります。
 流れる霧の僅かな隙間から覗く、覆いかぶさって来るような木曾の山々が、『夜明け前』の出だしに続く一節「一筋の街道は深い森林地帯を貫いていた」の文章を想起させます。
 (中村 佑)    2017年2月11日



ホームへ