よそ見 わき見 気まま旅

第36回  中山道 - 三条大橋
 11年前、菊舎は美濃から江戸へ向かう女一人の大行脚を完結させていました。江戸に足かけ3年滞在した後は、九州各地、美濃以西津々浦々に杖を向けた菊舎でしたが、初めての大行脚から11年過ぎた寛政5年、中山道を辿って再び江戸に向かう旅に出ました。
 何度となく渡った三条大橋。広重が東海道五十三次に描いたあの三条大橋を渡る時、京に入る人、京を後にする人、夫々の思いを抱いて大橋を渡ったはずです。菊舎とて同じ。心地よい興奮と期待に胸を膨らませ、はずむ思いで橋板を踏みしめたのではないでしょうか。
 西詰から二つ目の擬宝珠に刀傷があります。池田屋事件の際に付いたものといわれています。尊王攘夷派の志士と新撰組が切り結ぶ刀の切っ先が当たったものでしょう。
 現在はコンクリート製の橋に変わっていますから、欄干だけは木製の橋の物を残したことになります。
 隅々にまだ夜の気配が残る三条大橋の擬宝珠を、弱めのストロボを当てて浮かせてみました。
 (中村 佑)    2016年8月1日



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