よそ見 わき見 気まま旅

第32回  白川の関

 冠を正し衣装を改める心持ちで芭蕉は白川の関を越えました。だけど白川に関する菊舎の記述は多くありません。手折菊に、白川の関路をふみわけ処々で句を詠みはしたものの「おふかたはわすれぬ」と書いています。
 芭蕉が白川の関を越えたのは、卯の花が咲く季節。曽良の句「卯の花をかざしに関の晴れ着かな」の一句が奥の細道に見えます。菊舎が越えたのは真冬でした。季節こそ違え菊舎の句が残っていれば、関所を越える二人の気持ちの対比を楽しむことが出来たのに、と残念です。

関所跡後方の小高くなった辺りはカタクリの自生地です。季節が少し早すぎた所為で数輪の花を目撃しただけでしたが、皐月の風に揺れる姿は可憐です。
 関所より少し南、栃木県との県境附近の旧奥州街道上には、追分明神があります。義経が平家討伐のため平泉をあとに、戦勝を祈願した場所がこの明神だと伝わっています。
 (中村 佑)    2016年4月2日



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