よそ見 わき見 気まま旅 |
第29回 仙台 | |
松島の月 |
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芭蕉は、奥の細道の旅立ちに「松島の月先ず心にかかりて・・」と書きました。松島は天下の名勝。芭蕉の記述をそのまま借りるなら、「其の気色、窅然(ようぜん)として美人のかんばせを粧ふ。ちはや振る神のむかし、大山づみのなせるわざにや。造化の天工、いずれの人か筆をふるひ詞を尽さむ。」 つまり、どんなに天才的な画家でも文筆家でも、この素晴らしい景色を完璧に表現することは出来ないだろう、と言っています。それほどまでに芭蕉を酔わせた松島の景色でしたが、心にかかっていた月はいったいどうだったのでしょう。 松島の景色を堪能した後11日に瑞巌寺を訪れた、と奥の細道に書いています。すると、芭蕉が見た月は月齢9~10日の上弦の月だったことになります。気ままな旅人が、西行戻しの松公園から眺めた月は月齢12~13日の上弦の月でした。芭蕉が目にした月より幾分満月に近いことになります。 一方菊舎はといえば、月に関する記述は残念ながら残っていないようです。「松島や小春ひと日の漕たらず」の句を残しています。漕ぐ舟にもっと揺られ、松島の素晴らしい景色の中にもう暫く身を置いていたかったようです。 |
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(中村 佑) 2016年1月1日 |