よそ見 わき見 気まま旅

第26回  山寺
 岩にしみ入る
 荒砥を過ぎると小滝街道を進み山寺に向かいます。途中、標高520mの小滝峠を越えますが、現在は全長1.5kmのトンネルが山腹を貫いていて、苦も無く通り過ぎてしまいます。通り抜けて、トンネルの上にどっかりと座す山の姿を振り返えると、苦労であっただろう峠越えの菊舎の旅が偲ばれます。
 山寺は、大勢の観光客がひしめき合って大賑わいでした。人々のざわめきが岩にしみ入りそうな気配でしたが、随所に、千年を超える時間を重ねてきた重々しさと静寂を語る風景を目にすることが出来ます。

 山頂に到る石段は千段を越えます。その長い石段は、重なり合う苔むした岩、生い茂る木の葉を通り抜けた陽の光、岩壁に刻まれた墓標の数々に目を奪われ、右に左に寄り道をしている内に山頂に着いてしまいます。
 団体客の多くは、わき目も振らず頂上を目指すので辛そうです。よそ見わき見気まま旅が良いのです。
 納経堂の脇からは、菊舎が向かった二口峠へ繋がる道が俯瞰できます。

 納経堂
 (中村 佑)    2015年10月1日



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