よそ見 わき見 気まま旅 |
第21回 |
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江戸に向かうのが目的であれば、姨捨からだと北国街道を南下し、追分から中山道を東進すると近いのですが、菊舎は、もと来た道を日本海側まで引き返しました。 という事は、善光寺や姨捨は、本来思い描いていた道順からは寄り道だったようです。添え書きを届けるのも、寄り道の大きな理由の一つだったのでしょう。 直江津方面に引き返す途中、小林一茶の故郷柏原を過ぎると野尻です。避暑地として知られる野尻湖は、ナウマン象の化石が出土することも良く知られています。 この宿場に、今は無人の安養寺というお寺があります。自伝小説「銀の匙」を書いた中勘助が暫く仮住まいをしていた寺だと説明がありました。1718年中興とありますが、本堂は閉じられたまま。再び衰退の道を辿っている姿は侘しげです。 少し離れて芭蕉の句碑が立っています。「うめが香にのっと日の出る山路かな」と刻まれています。芭蕉の130回忌に建てたものだそうです。はて?刻まれたこの句、身近などこかで見覚えがあるぞ。 |
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確かめてたところ、そう、菊舎の生誕地、田耕にも同じ句が刻まれた碑がありました。こちらは美濃派九世山本友左坊が、菊舎ゆかりのお寺、妙久寺を訪れた際に揮毫したものと説明板にあります。 芭蕉の句なので、アチコチに同じ句が刻まれた碑があったとしても頷けますが、菊舎の故郷とつながったのはちょっとした感動でした。 |
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田耕の芭蕉句碑 |
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(中村 佑) 2015年5月1日 |