よそ見 わき見 気まま旅

第18回  善光寺

 善光寺の仁王像は格子ではなく金網に護られています。金網越しに見ても、兎に角ものすごい迫力です。恐らく地元の方でしょう、通りがかりの男性が下の隙間から覗いて御覧なさい、と教えてくれました。興味津々覗いてみると、何と!像の裾に高村光雲の名前が記されているではないですか。知らずに行き過ぎてしまうところを、これは収穫。お礼を言おうと立ち上がった時には、既に男性の姿は参拝の人ごみに紛れていました。
 調べてみると、1847年の善光寺地震で仁王門は焼失。再建後1891年の大火で再び焼失。その後紆余曲折を経て、1919年に光雲の手になる現在の仁王像が、28年間の空白の後やっと完成したのだそうです。菊舎が初めて善光寺を訪れたのは天明2年(1782)のことです。先々代の仁王像を見たことになります。
 菊舎が善光寺に向かっていた時期は梅雨の末期でした。身体に足元に容赦なく叩きつける激しい雨の所為で、歩くことさえままならない中を、菊舎はずぶ濡れになって善光寺に辿り着きました。頼まれていた添え書きを届けた相手は、既に物故して法事の最中。家人は、法事の最中に偶然届いた故人生前の息遣いを、驚きと感動で迎えた事でしょう。菊舎は大いにもてなされました。
 (中村 佑)    2015年2月2日



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