よそ見 わき見 気まま旅

第14回  海道の松
  何だかタコが身をくねらせているようにも見えますね。実は越中と越後の境にある市振の関で、ずっと旅人を見守り続けてきた一本松です。
 西からやって来た旅人は、この松に別れを告げると愈々北陸街道最大の難所、親不知に向かいます。打ち寄せる波の合間を縫って渡る、道無き道は命がけです。逆に東から親不知を無事越えて来た旅人は、この松を見上げて安堵の胸をなでおろすのです。
 落人となった平頼盛を追ってこの難所を越えようとした奥方が、連れていた子を波にさらわれて詠んだ歌「親知らず子はこの浦の波枕越路の磯の泡と消え行く」が名の由来だとか。
 この日も、親不知は激しい波しぶきの向こうに見え隠れ。越えなければならなかった旅人の苦労がしのばれます。
 菊舎は馬で越えたそうなので、内陸側をググッと迂回したのでしょう。命あっての物種です。
 (中村 佑)    2014年10月1日



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